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グローバルスタディ経験者に聞いてみた!

日本発のグローバルCROを目指すインテリムのモニターは、若いうちから国際共同治験(グローバルスタディ)を担当することが少なくありません。今号では、グローバルスタディ経験者にインタビューし、そのやりがいや醍醐味についてご紹介したいと思います。

今まで経験したグローバルスタディについて教えてください。


Aさん:昨年は、外資系製薬メーカーによる呼吸器系治療薬の国際共同治験プロジェクトを担当していました。日本、アジア、ヨーロッパを含めた約18カ国の国と地域が参加し、日本におけるモニタリング業務を行いました。現在は、神経系の希少疾病用医薬品(オーファン・ドラッグ)の開発のための、日本・韓国・台湾が参加するアジアンスタディを担当しています。

Bさん:私もAさんと同じ呼吸器のプロジェクトを担当していました。その他には、インテリム入社前のことですが、モニターになって初めての試験が抗がん剤のグローバルスタディでした。その次の試験もまた別の抗がん剤のグローバルスタディで、それは希少疾病でしたので、モニター2名で10症例ずつ担当し、非常に苦労したのを覚えています。

特に苦労したのはどういったことでしょうか?

Bさん:2つ目に担当した抗がん剤の希少疾病は症例を集めるのが難しく、しかしなかなか症例が集まらないと、「なんで日本だけこんなに遅いんだ」と国外のリーダーから指摘を受けることになり、そのプレッシャーは常に感じていました。特にグローバルスタディに慣れていない施設の場合、クエリー(CRFデータの不整合の発見によって治験実施機関に対して発行する照会事項)も全て英語で対応しなければならない状況下で、モニターに任せられる業務が多くなりがちで、モニターの負担は大きかったです。

Aさん:私も同じようなことがありました。日本の症例が予定通りに集まらなくて、その原因は色々あったのですが、エントリー予定の直前に新たな疾患が見つかりプロトコルの適格性を満たせなかったこともありました。

Bさん:日本人はマメに病院に行くからね。

Aさん:そう。日本は医療制度が充実していて、国民全員が健康保険に加入する義務があるけど、海外では健康保険の加入義務がなかったり、民間の保険に加入しているケースが多いから、日本人ほど頻繁には病院にかかりません。加えて、日本人は健康診断も定期的に受けているから、胃カメラデータのある患者さんは何かしら合併症が認められグローバルの求める基準を全然満たせないこともあります。

逆に面白かったことや、グローバルスタディならではの楽しさというものはありますか?

Bさん:苦労したことでもあるんですけど、グローバルスタディならではのスピード感がありますね。タイムマネジメントに対する意識が海外の方は非常に高くて、様々な場面でスピードを求められます。

Aさん:「ASAP(as soon as possible)」の文字を何度見たか…(笑)

Bさん:でもそれだけに、決められた期限内に成果を出せばしっかり評価してくれます。期限より早くクローズしたら、ありがとうという言葉を貰えたり。

Aさん:今後はローカルスタディでもよりスピードが求められてくることは間違いないので、グローバルスタディでの経験は活きてくると思います。慣れないうちは無理難題と思ってしまうことでも、覚悟を決めて期限内にやってのけることがやりがいに繋がるし、その積み重ねが自分の自信にもなります。

Bさん:逆に、海外の方と比較してよく日本人が優れていると言われるのがリスクマネジメントの意識。日本人って細かい性格だから、プロトコールの内容に関して、もしこういうことがあったらどうするのか?という「もしも」によく気がつきます。国外のリーダーとのテレカンの場でそういった質問をすると、しばしば"That's a good question."という反応があり、対応を検討してくれます。こうして自分から積極的にコミュニケーションを取ることで、グローバルスタディのチームの一員であるという実感がわきますし、自分達が思うよりもずっとチームメンバーとの距離は近くなります。スペイン人の方が上司だったときは、日本時間に合わせて早起きして自宅からテレカンをしてくれたり、3.11の大震災のときには、会ったこともない私を心配して「危険だったら家族を連れて私の家に避難していらっしゃい」と言ってくれたりして、この人は自分のBossなんだ、と心から感じていました。



Aさん:時差があるので、コミュニケーションできる時間は限られています。その時間を有益に使うためにも、英語力は大事ですね。

Bさん:テレカンの場で、名指しで英語で質問をされることもありますしね。「○○さんはこのタイムラインでできる?●●さんはどう?」とか。海外の依頼者様との間に日本企業が入るケースもありますが、それはそれで伝言ゲームのようになってしまって、なかなか望んだ回答が得られなかったり、依頼者様の回答の一部分しか伝えてもらえずにコミュニケーションが円滑にいかなくなったりというデメリットがあります。

Aさん:直接やり取りしていると、英語の勉強にもなりますしね。

Bさん:海外のリーダーからのお怒りメールを読んで、なかなか英語で怒りの感情を伝えるメールを書くことってないので、なるほどそういう表現で伝えるのかぁ…と勉強になったことがありました(笑)。

英語力については、どのくらい要求されるものでしょうか?

Aさん:英語ができる人がすごいというわけではなくて、英語はあくまでもツールにすぎないと思っています。グローバルスタディであっても、日本のCRCさんやドクターとやり取りするのは同じですから、CRAとして一通りの業務ができるようになっていなければ、英語だけ学んでも意味がありません。

Bさん:日本人は、文法や表現の間違いを気にしてなかなか発言できないことが多いのですが、グローバルスタディでやり取りする韓国や中国のCRAはどんどん英語で発言してきます。少しくらい稚拙な英語でも、同じプロジェクトに携わる仲間はその意図を汲み取ってくれますので、「恥ずかしいと思う前にしゃべっちゃえ!」という気持ちで負けずに発言するようにしています。

Aさん:香港のCRAと話す機会があって、中国語と英語が堪能な上に「日本語も勉強中で将来は日本で働きたいと思っている」なんて話を聞きますと、すごいな、うかうかしていられないな、と良い刺激を受けますね。

最後に、これからグローバルスタディに挑戦したいと思っている人に対してメッセージをお願いします。

Aさん:繰り返しになりますが、英語はあくまでもツールであって、勉強すればいいだけのことですので、英語ができればグローバルスタディができる!というわけではなくて、CRAとして早いスピードの中でも確実に業務を完了できるように、グローバル、ローカル問わず、自分が担当する試験を期限内に正確にやり遂げていく姿勢が必要だと思います。

Bさん:そうですね。CRAとしてやるべきことを一つ一つしっかりやることで、「日本だけがクエリが少なかった(CRFの完成度が高い)」とグローバルスタディの現場で評価されることにも繋がります。そういうとき「日本もやればできるんだぞ、日本の治験はお金がかかるし遅いとよく言われるけど、日本も捨てたもんじゃないぞ!」と誇らしい気持ちになれます。これからグローバルスタディを経験する方には、ぜひ良い仕事をして、その気持ちを感じてほしいと思います。

2014年3月10日